岡島達雄

     42年前の7月20日は、御母衣ダム堤にいた。白山登頂の前夜である。当時は、米、野菜、缶詰などの食料とコッヘルなどの調理器具を詰め込んだザックにテントを持参して出かけたものだ。雨が降るとヤッケの上にポンチョ、杖を突きつきゆっくり登る。
   ダムは、コンクリートを使わないロックフィルダム。石と粘土をゆるい勾配に積んで出来ている。ゆっくり上り平らな広い部分があり、それからまたゆるい勾配でダム湖に至る。公式には高さ131メートル。
   天候に恵まれ午後3時には到着。テントを張る者、薪を集める者、釣をする者、調理にかかる者、ビールをダム湖に冷やす者などに分かれて作業を開始。5時ごろには完了。キャンプファイアーに入る。当時庄川からたくさんの流木が漂着し管理事務所はその処理に困っていた。聞くと火事にならないよう注意さえすれば、燃やしてよいという。
    われわれは20~30センチの丸太を井桁に組み人の背ほどに積んで点火し、腹ごしらえ、そして酒盛りが始まった。勢いに乗った我々は、大いに飲み大いに歌った。だがいつまでも騒げるものでもない。その晩テントを張っていたのは数パーティーだったか。声は厚い森に吸いとられ、しんとしてくる。そのとき誰かがラジオのスイッチを入れた。聞こえてきたのが、初めて月面着陸に成功したアームストロング船長の「これは小さな一歩だが人類にとっては大きな一歩だ」という言葉だった。見上げると満点の空に月は涼しく輝いていた。
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   一年を反省してみるに、近くは家畜伝染病、水害、噴火など、遠くは地震、津波、原発事故災害などにとらわれ、フィンランド派遣GSEメンバーの報告と期末に米山奨学生を迎えたこと以外に、列島外のことに思いを馳せる余裕はなかった。レイ・クリンギンスミスRI会長の「地域を育み、大陸をつなぐ」のテーマはわがクラブにとってあまりに大きかった。
    伊藤直前ガバナーのテーマ「クラブを活性化し、地域と時代の要請に応える」ためには、限られた資源のなかで、何を残し何を捨てるかについての判断が要請される。35年と中程度の伝統をもつわがクラブでは、その合意形成の過程こそがクラブ活性化につながるのだろう。「ロータリーの物語は幾度も書き換えられなければならない」というポール・ハリスの言葉をかみしめているところである。
   クラブを始め、地区の関係者のご指導と友情に篤くお礼を申し上げる。充実した一年をありがとう。

岡島会長の退任挨拶 H23.6.30