広報・雑誌・ITリーダ 日髙 茂

暑さ寒さも彼岸までと言うが、律儀に今年はその通りで当日は肌寒い日であった。

早めに墓参を済ませ、お彼岸の法要に妻と二人して菩提寺に出掛けた。いつもの事ながら参加者の絶対多数はご年配の方々であるだけでなく、お一人での方もかなり居られた。

今年も私たちは無事にこちら側に座れたことに感謝しながら、右を見て左を見て、あの方の次の次あたりに自分の番が来そうだとつい目が泳ぎ、ふっとため息が出てしまった。

今年のご法話は「精進料理を頂く」と言う話だった。精進とは一生懸命の意味があり、祖父母が「昔から何事にも精進すること、さすればきっと花が咲き実がなる」との言葉があると言っていた事を思い出す。

彼岸の料理でも「一生懸命作った物であれば肉や魚を取り入れてかまわない」旨の法話は、仏様につかえる御坊のお話だけに説得力があり、なるほどそういうものかと聞き入った。

ご法話の後、妻は意味ありげにニタリと笑っている。案の定、「我が家はいつも精進料理」と胸を張った。

然し私が食事療法中だから、滅多に肉や魚の姿をした物が食卓には上がってこないことであり、確かに我が家は精進料理で有ることは間違いない。妻には長期間に亘って食事に気を使わせているので反論はできなかった。

待てよ、折角のご法話は私の耳をすり抜けてしまったのだろうか。これはまずい、もう一度、精進精進と唱え返し、山の神の祟りが無いように気をつけよう。