2010年GSEフィンランド派遣チームメンバー
佐藤かおり
在・オーストラリアメルボルン市

息子と、今年帰国したとき

高鍋ロータリーの皆さま、お元気ですか。私は、2010年にGSE研修のメンバーとしてフィンランドにて貴重な体験をさせていただきました。その際はサポートクラブとして皆さまに大変お世話になりました。短期間でありましたが私のような者を温かく迎え入れてくださった皆さまの親しみのあるお人柄が懐かしく思い出されます。

あれから縁あってこのオーストラリアの地に移り住んで早いもので2年が過ぎました。結婚そして出産と慣れる間もなく慌ただしく月日が経ちましたが、今こうした機会を以て自分なりに感じたことをお伝えできることは嬉しいことです。

この地にはワーキングホリデーという制度を利用して来たのが初めてでした。正直ここに来るまでこの国のことはあまり知らなかったのですが来てみると何もかもが新鮮、通りすがりの方は微笑んで挨拶し初対面の人でもあたかも知り合いだったかのように会話している、この大地に象徴するように人が朗らかで親しみがある人が多いというのが私の第 一印象でした。

人口約2100万人、日本の20倍もの面積を持つオーストラリア、環境もさながら人々がとても幸せそうに生活している印象を持ちます。多くの国の中でも例えば日本と比べてみても他国からの移住を歓迎する国です。実際ひとたび公共交通機関でも使ってみると一瞬ここはどこの国だろうと錯覚するほど多国籍人に溢れています。中国語、ベトナム語、イタリア語、ギリシャ語と本当に色んな言語が飛び交っています。出身国でのコミュニティーやお祭りなどのイベントも奨励されこちらの色に染まることなく自分の生まれた育った自国の文化や習慣に誇りを持てます。そういう理由からも人々の満足度は高くなっているものだと思います。実際「世界で最も住みやすい都市ランキング」でオーストラリアの都市は過去何度も選ばれています。私の住むメルボルンは近年3年連続で1位に選ばれる快挙です。

フリンダース駅

メルボルン市を望む近くの公園

近くの公園

職業に於いても男女共フェアであり夫婦共働きという世帯も珍しくありません。子育ては母親だけの仕事ではなく夫婦協働してするのが原則です。一女性として感じたことですが、こちらに来た当初母親でなく父親がベビーカーを押して散歩したり週末となれば子供たちを甲斐甲斐しく世話している姿をみて感動したものです。女性の専業主婦という職種がまだ多く存在する日本と違いこちらは、時間給のパートタイム職、正規だが週に2~3日出勤のカジュアル職、それといわゆる正規で週に5日程度のフルタイム職という出来る範囲で無理なく働ける環境が女性の社会進出を助長する結果になっています。また病院や銀行でも行けばかなりの頻度で「あの人は今ホリデーよ」と言われ休日や休暇のために仕事をしているという感じで、ある意味割り切ったところが気持ちのよいものです。

その半面、国が変わることで自分の生まれ育った環境とのギャップに悩むこともあります。この国にとって日本は最大の貿易輸出国であると同時に主要な輸入国でもあるため日本の製品も溢れています。勤勉で手先の細かな日本人が作り出す日本製品はこちらでもかなり評判がいいようです。「他社に負けないものを」と時間と技術を駆使して作り出すものは素晴らしいMade in JAPANの賜物です。きめの細かいサービスで顧客にはいつも低姿勢な姿は日本が誇るべきおもてなしの心です。こちらでは他社との競争意識があまり無いように感じ、どんな場面でも全てに時間がかかります。いい意味で言えばおっとりした国民性の現れなのでしょう。何度となく日本のサービスが恋しくなるのは言うまでもありません。ただ有り難いことにこの国は親日家の多いことでも知られています。外国語教育の中でも日本語の人気は高く初等・中等教育における学習者が殆どで簡単な日本語なら話せる子たちも多いようです。実際近所の小学校も日本語教室を設けておりそれと同時に日本文化(茶道や華道、マンガなど)に親しみを持って愛好する方もよく見かけます。

また医療に於いてですがメディケアという全国民加入の医療保険があります。日本で言うなら国民健康保険に該当します。自己負担額は15-20%になりますが適用できるものは基本的な診察・検査・手術治療費でしかも公立病院という条件があります。それ以外の歯科や眼科、健康診断などは対象外です。また日本では無料の救急車ですがこちらでは数百ドルの自己負担です。そして診察するまでの過程ですが日本と違って病気になったからといってすぐに専門病院や総合病院に行くことはできません。まずはかかりつけのホームドクター(一般開業医)に診てもらいその上で必要とあれば専門の医師を紹介してもらい専門医や病院に行くことになります。ホームドクターにしても専門医にしても原則予約制でありすぐにかかれないジレンマがあります。ただこちらでは任意ですが有料の民間保険に加入することで公立病院では待たされる検査や手術を私立病院で待たずに受けられたり、専門医を選択できたり、または救急車を手出しなく受けられたりすることができます。保険加入によって受けられる医療に大きな差がでるのであればなおさら必要ですが、日本のように皆保険で殆どがカバーされるのであれば民間の保険の恩恵は受けないかもしれまん。ただこの任意の保険がどのくらい普及しているのかは正直私もわからないところです。

このように日本に居ては意識しない日本をこうして外に出たことで対比して感じることが出来るのもまた面白い経験だと思います。まだ建国100年強と先進国の中では若い国でありがら豊富な食料と豊富な資源でまだまだいくらでも発展しそうな国、そんな可能性のある国で少しずつですが自分自身も共に成長していきたいと強く願っています。